ワーグナー:歌劇「タンホイザー」全曲

フランツ=コンヴィチュニー指揮
ベルリン国立歌劇場管弦楽団及び合唱団
ハンス・ホップ
フィッシャー=ディースカウ 他
 
Recorded:1960

 

歌劇「タンホイザー」は全体を通じて随所に聴きどころがあり馴染みやすい。特に「序曲」や第二幕4場の “喜びてわれら貴き殿堂に挨拶を贈る” いわゆる「大行進曲」が広く知られている。

本LP盤は歌劇場叩き上げのコンヴィチュニーの安定感のある演奏と有名な歌手陣が集う、ファンにはEMIの名盤として名高いもの。買った当初は エリーザベト・グリュンマーの美しいソプラノに魅了され、第二幕冒頭の「殿堂のアリア」の短いシーンばかり繰り返し聴いていたことを想い出す。彼女は1911年生まれであるから、収録時においても既に相当なベテランの域に達していたはずである。しかし歌声は年齢を感じさせない、実に若々しいものに感じたのだ。現代はすぐに歌手の容姿や映像が手に入るが故に、演じ手と作品の人物設定にギャップを感じしまうこともあるのだが、当時は針から伝わるレコードの音を耳にすることで、エリザベート姫の想像上の舞台を脳裏に膨らましていた。良い時代であったと思う。ほかにウォルフラムを演じるディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウの「夕星の歌」も素晴らしい。この独唱は低音部の唄い方も着目されやすいところであるが、大御所は喉の響きが伝わるがごとく、難なく歌いきっている。

購入は1988年頃。中古で4,000円ぐらいであったと思う。それまで前奏曲集や抜粋盤などしか購入経験のなかった私が初めて買ったワーグナーの全曲録音盤である。

 

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