ワーグナー:管弦楽曲集
(リエンチ、さまよえるオランダ人、マイスタージンガー、タンホイザー、ローエングリン、パルシファル の序曲、前奏曲)
ハンス=クナッパーツブッシュ指揮
ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団
ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団
ハンス=クナッパーツブッシュのワーグナー管弦楽集、レーベルがウェストミンスターと言えば誰もが知る名盤である。今日に至るまで音源は同じであるのに数え切れないほど再販され、その都度ジャケットも様々姿を変えてきた。どれが初期マスターなのか、出所も定かではない状態で販売されたとも言われている。クナとミュンヘンフィルとの名盤と言えば、この盤以外にもブルックナーの第8交響曲(クナのブル8)が挙げられるのではないかと思う。しかしオーケストラの編成としては大規模であり、ウエストミンスターが得意とする録音としては、むしろウィーン・コンツェルトハウスやバリリ弦楽四重奏団の一連の室内楽録音の方が受けは良いのかもしれない。それこそジャケットのデザインもセンス抜群なのである。
そんな本レーベルの中で、この盤はリマスター盤も含め数枚の保持に至るが、このLPジャケットから強くインパクトを感じている。元々レコード録音にはさして興味を示さなかったクナではあるが、華麗な指揮さばきや端正な横顔のポートレートは数多く残されており、見栄えもする点でよくLPジャケットにも使用されている。しかしこのジャケットでは自画像の絵画を載せた朴訥なところが良い。上方の虚空に向けて、意味ありげに視線を移し何か思うところがあったのであろう。中身を何も知らない人でも、絵から受ける好好爺の不思議な印象から「これは買いだ」と心踊らされるのではないか。無論、このLPは音質も演奏も折り紙付きである。ワーグナーは彼の得意とするところであり、どれも申し分ないところだが強いて言えば、A面最初の「リエンツィ」がイチ押しである。