ワーグナー:管弦楽曲集
(「ジークフリート牧歌」、「ニュールンベルクの名歌手」第一幕への前奏曲、「ラインの黄金」前奏曲、「トリスタンとイゾルデ」第一幕への前奏曲)
ハインツ=レーグナー 指揮
ベルリン放送交響楽団

Recorded:1977~1978

 

このジャケットから得られる印象は少ない。デザインはありきたりで廉価盤のイメージが払拭できない。映えないのである。手に取ってこれは名盤だろうと思う人はまずいないだろう。しかし私のお気に入りのレコードの一つなのである。ドイツシャルプラッテンというレーベルは旧東ドイツの国営レコード会社であるが、安価ながら隠れた名盤が多いのだ。ハインツ=レーグナーは東ドイツで知られた指揮者であり、主にベルリン放送交響楽団で活躍し、日本でも一時期において読売日本交響楽団で常任指揮者を務められていた。ただし惜しむらくは晩年の評価は芳しくないようである。

このレコードにおいて何においても際立つのは「ジークフリート牧歌」である。A面に据えたというのはとても意味がある。ワーグナーの演奏は凜々しく勇ましく、時に感傷的であることで聴く者の心揺さぶられるものという印象がある。そういう意味あいではレーグナーの演奏スタイルは少し遠いところにあるのかもしれない。でも繰り返し聴いてみると違うのだ。私が、彼の演奏から感じとれるのは、管弦楽を主とした弦の響き、管の優しさから来る音色の美しさである。個々の楽器の奏でる響きが紡いでゆく。そして静けさの中、一瞬、曲が途切れたのではないかとはっとさせるような間の取り方も何とも上手いな、と思ってしまう。こういった途切れは、通しで録音を行っていない証拠だと言う人もいるようだが、こんなに綺麗に繋ぐことが出来るのだろうか。全く違和感はない。全体を通してテンポも確実で淀みがなく澄み切っている。息子のジークフリート誕生をただ音楽で祝いたいとする、ワーグナーの純粋さが演奏に現れているようで、素直に感動を覚える演奏である。

 

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