ワ-グナー:歌劇『ローエングリン』全曲

ジェイムズ=キング(T:ローエングリン)
グンドゥラ=ヤノヴィッツ(S:エルザ)
グィネス=ジョーンズ(S:オルトルート)
トマス=ステュアート(Br:テルラムント)ほか

バイエルン放送交響楽団&合唱団
ラファエル=クーベリック(指揮)
Recorded:1971

チェコの巨匠ラファエル・クーベリックが指揮したローエングリンである。ジャケットのセンスも気品が漂う。箱は頑丈、厚さが5㎝ちかくもあり、解説書もレコードサイズで分厚い。録音はもう50年ほど前になるが、この当時のクラシック音楽に対する意気込みというか敬意というものなのか、今とは比べものにならないものが感じられる。ドイツグラモフォンにしてキャストも最高の布陣。豪華な配役だ。そしてクーベリックのワーグナーは何より聴いていて気持ちが良いという点に尽きる。冒頭の裁判劇から英雄出現に伴う場面展開も深刻さを増し、徐々に段階を踏んだ盛り上がりは抜群の冴え、その一方で第二幕のエルザ入場の荘厳なシーンも聴く者に安心感と心地よさを伝えてゆく感動がある。バイエルン放送交響楽団は、普段の元気良さに加えてローエングリンでは場面場面で弦楽器が逆に細かく丁寧に刻んでくる。クーベリックの演奏はそれほど多く親しんでいるわけではないが、このローエングリンを聴くことで彼の偉大さは伝わるのだ。