ヴィヴァルディ: 協奏曲集『四季』
イ・ムジチ合奏団
フェリックス・アーヨ(Vn)
これはイ・ムジチの名盤。20世紀に至るまで世に埋もれていた「四季」は、今では数え切れないほど演奏され、レコードも多く存在する。しかし私は結局、この一枚に帰ってきてしまう。子どもの頃に初めて聴いた衝撃印象が故にである。世間で言うところの名盤の善し悪しもつきかねるが、クラシック音楽には往々にしてこの自身の幼年時にうけた衝撃は付きものだ。今でも息の合った絶妙な間合いに安心感を持ち、録音も古い盤なれど、刺々しくなく柔らかく心地よい。CDジャケットでは伝わらないところだがLP時代のそれは見た目も美しく、とても調和をもったデザインで、挿絵を見て想い耽ってもいい。解説もしっかりしている。発売当時の完成度の高さが窺える。
バッハ:マタイ受難曲
ウィレム・メンゲルベルク指揮
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 カール・エルプ、ウィレム・ラヴェリ、ジョー・ヴィンセントほかアムステルダム・トーンクンスト合唱団、
ツァングルスト少年合唱団
正直にいうとメンゲルベルクがライブ録音で残していなければ、聴く機会を持たなかったかもしれない。メンデルスゾーンによって後年に見いだされたバッハの埋もれた名曲「マタイ」も録音媒体としては肉声の伝わり方による評価が大きいのかもしれない。1939年という古い録音にもかかわらず圧倒的な臨場感をもつのは驚きである。第39曲、人呼んで「メンゲルベルクの涙のアリア」は聴く者の情緒に働きかけ、これは彼の奏法の面目躍如と言えるだろうか。今をもってしても彼の演奏は常道とはいえないかもしれないが、エンタメ感はこのマタイにおいても満載である。
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