チャイコフスキー : 『四季』
イリーナ・メジューエワ(P)
チャイコフスキーが描く四季はロシアの自然そのものを表している。一年を通して厳しい季節が長い地域であるが、作品からは自然描写の中での生命に対する喜びや感謝が伝わる。だいぶ前のことだがイリーナ・メジューエワさんの演奏会に接して、この方にはどこか違うインパクトがあるなと感じた記憶がある。鍵盤に向かう美しさもさることながら、ただならぬ真面目さと純で素朴な音色が響く。余計な脚色も派手さもない。それでいて芯の強さと優しさをもつ。「四季」はまさに彼女のそんな性格を現しているのかもしれない。
ワーグナー:『ニュルンベルクのマイスタージンガー』
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バイエルン国立歌劇場管弦楽団
オットー=ヴィーナー、ジェス=トーマス
フリードリッヒ=レンツ、クレア=ワトソン
リリアン・ベニングセンほか
バイエルン国立歌劇場合唱団
フリードリッヒ=レンツ、クレア=ワトソン
リリアン・ベニングセンほか
バイエルン国立歌劇場合唱団
ドイツ・ミュンヘンでは「マイスタージンガー」で年を明け「バラの騎士」で年末を締めくくる。過去にはナチスの本拠地であったこの都市は徹底的に爆撃されたが、程なくミュンヘン市民の伝統文化を守り続けようとする信念、そして個々の寄付という形で、その象徴でもあったバイエルン州立歌劇場が元通り再建された。本作は、そのこけら落とし二公演の中の一つで貴重なライブ音源である。実に音質も悪くない。劇場叩き上げのカイルベルトならではの安定したタクトさばきが冴える。皮をなめす槌の音、舞踏で床を踏み鳴らす音も舞台の臨場感としてじんじん伝わってくる。復興させた市井の人々の想いは、市民社会を舞台にした本作に見事に再現されているようだ。
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